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東京地方裁判所 昭和58年(レ)166号 判決

事件

控訴人

ナカヨ電子サービス株式会社

右代表者

星野力男

右訴訟代理人

池田和司

被控訴人

池田昌夫

右訴訟代理人

宗藤泰而

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  控訴の趣旨

1  原判決を取消す。

2  被控訴人は控訴人に対し、金二六万四四五〇円及びこれに対する昭和五六年五月二八日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

3  訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。

4  仮執行宣言

二  控訴の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二  当事者の主張

一  控訴人の請求原因

1  被控訴人は、昭和五五年二月二三日訴外株式会社太陽神戸銀行(以下太陽神戸銀行という。)から、金三一万円を以下の約定で借り受けた。

(一) 償還方法 元利金等弁済方式による分割返済・昭和五五年三月二七日限り金六七四〇円、同年四月から昭和六〇年一月までの間毎月二七日限り金六四三五円、同年二月二七日限り金六三八一円

(二) 利息 年九パーセント

(三) 遅延損害金 年一四パーセント

(四) 一回でも支払を怠つたときは当然期限の利益を失う。

2  控訴人は、昭和五五年二月二三日被控訴人の依頼により、右契約から生じる被控訴人の債務について連帯保証をする旨太陽神戸銀行との間で約した。

3  被控訴人は昭和五六年三月分の返済を遅延したので期限の利益を喪失し、控訴人は被控訴人の未償還残金合計二六万四四五〇円を昭和五六年五月二七日太陽神戸銀行に支払つた。

よつて、控訴人は、被控訴人に対し、委託を受けて保証をなした保証人の求償権に基づき金二六万四四五〇円及びこれに対する保証債務弁済の日の翌日である昭和五六年五月二八日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による法定利息の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1の事実(太陽神戸銀行からの借り入れ)は否認する。

被控訴人は、太陽神戸銀行から消費貸借の目的たる三一万円の金員を受け取つていない。右三一万円の金員は右銀行から直接控訴人名義の預金口座に振込まれた疑いがあるが、被控訴人は右金員をそのように直接控訴人に支払うよう太陽神戸銀行に指示したこともない。

仮に右金銭消費貸借が、被控訴人の委任に基づき被控訴人の代理人たる控訴人と太陽神戸銀行との間で締結されたものとしても、右委任は、被控訴人が後記のとおり控訴人から買受けた電話装置が被控訴人に引渡されることを条件としてなされたものであるところ、右引渡しがなされていない以上前記消費貸借契約は無権限でなされたものというべきであるから、被控訴人に効力を主張しえない。

以上の如く被控訴人は太陽神戸銀行に対し消費貸借契約の無効ないし不成立を主張しえたところ、控訴人は被控訴人に通知せずに太陽神戸銀行に右消費貸借上の債務を弁済したというのであるから、被控訴人は控訴人の求償に応じる義務はない。

2  請求原因2の事実(控訴人の連帯保証)は否認する。

3  同3の事実(控訴人の弁済)は知らない。

なお、控訴人の主張によれば、昭和五五年三月分から同五六年三月分までの分割返済金が支払われていることになるが、被控訴人がその支払をした事実はない。

三  被控訴人の抗弁

1  信義則違反

控訴人の本訴請求は、以下の事情から信義則に反し許されないものである。

(一) 被控訴人は、昭和五五年二月控訴人の代理人である訴外株式会社日本テレホンサービス(以下日本テレホンという。)から、控訴人の製造にかかるナカヨボタン電話装置NA―二〇六T一式(以下本件電話装置という。)を代金三一万円で買い受けた。その際被控訴人は、日本テレホン従業員のすすめにより右代金支払のため太陽神戸銀行のローンを利用することとし、その申込書を右従業員に交付した。請求原因1記載の消費貸借契約は、これに基づいて締結されたものである。そして右金員は太陽神戸銀行から直接控訴人に送金されている。

(二) 日本テレホンは、昭和五五年二月二〇日までに本件電話装置を納入する旨控訴人に約していたが、右期日を過ぎても納入されないので、被控訴人は同年四月ころ日本テレホンとの間で、本件電話装置の売買契約を解除する旨合意した。

(三) 仮に第(二)項記載の合意解除が認められないとしても、被控訴人は第(一)項記載の売買契約の際、日本テレホンに対し、本件電話装置は昭和五五年四月開業予定のドライブインの設備として購入するものであるからそのころまでに納入してほしい旨告げ、日本テレホンもこれを了承した。日本テレホンは右期日を経過しても本件電話装置を納入しなかつたので、被控訴人は、昭和五八年一二月二〇日の本件控訴審第二回口頭弁論期日において右売買契約を解除する旨の意思表示をなした。

(四) 控訴人の代理人日本テレホンと被控訴人との間で合意された、控訴人に対する保証依頼契約によれば、被控訴人がその債務を完済するまで控訴人が本件電話装置の所有権を留保するものとされている。

(五) 日本テレホンは(一)記載の売買契約の後倒産した。

(六) 以上のとおり被告が本件求償に応ずるとすると、控訴人は本件電話装置の売主であり、売買契約に基づき商品を納入していないのに代金を取得することになる。控訴人は、通常の注意を払つていれば、販売代理店である日本テレホンが現実に電話装置を納入したか否か確認しえたはずである。また、本件の貸金は、太陽神戸銀行から直接控訴人に送金されているのであつて、品物が被控訴人に納入されていない以上右金員は実質的にみて控訴人(ないしは日本テレホン)が借受け利用したものである。一方被控訴人は、一般消費者として商品が納入されなかつたので、売買契約を解除したもので、ローンを支払うことはないと考えたのは当然である。しかも解除後一年もたつてから太陽神戸銀行から請求されたものである。よつて控訴人の本訴請求は信義則に反し許されない。

2  停止条件

被控訴人と太陽神戸銀行は、請求原因1記載の消費貸借契約の際、日本テレホンが抗弁1の(一)記載の売買契約に基づく本件電話装置の引渡義務を履行することを停止条件とする旨合意した。

四  抗弁に対する認否

1(一)  抗弁1の(一)の事実(本件電話装置の売買契約)は否認する。

控訴人と日本テレホンとの間には、控訴人の製造販売にかかる商品を日本テレホンが継続的に販売取引を行うという関係が存するが、控訴人は日本テレホンとの間で代理店契約を締結していないのであつて、日本テレホンは控訴人の代理店ではなく特約店にすぎず、全く別個の法人である。日本テレホンは、自己の資金で買受けた控訴人の商品を、自己の営業としてその一般顧客に販売していたものである。

本件電話装置の売買契約の際、被控訴人が日本テレホン従業員に交付した「ナカヨビジネスローン借入保証依頼約定書」と題する書面(甲第三号証)には、あたかも控訴人が本件電話装置の売主であるかの如き記載が存するが、右書面は本来控訴人が直接ユーザーにローン販売するときに使用するものであるところ、たまたま本件では売主である日本テレホンが太陽神戸銀行との間でローン契約の提携をしていないため、同銀行とローン契約の提携をしている控訴人がローン利用の便宜からその名称を形式上利用させることとし、そのために便宜上右の用紙を使わせたものである。また被控訴人と太陽神戸銀行との間の金銭消費貸借契約証書(甲第四号証)には販売店名として控訴人が記載されているが、これは誤記である。

(二)  同(二)の事実(合意解除)は知らない。

(三)  同(三)の事実(定期行為による解除)は知らない。

(四)  同(四)の事実(控訴人の所有権留保)は否認する。

後述するとおり、本件電話装置は継続的取引により控訴人から日本テレホンに売却ずみのものでありすでに所有権は日本テレホンに移転しており、日本テレホンがこれを留保していることはあつても控訴人がその所有権を留保するということは到底考えられないところである。また甲第三号証には控訴人が本件電話装置の所有権を留保しているかの如き記載が存するが、これが便宜的に使用されたものにすぎないことは前述したとおりである。

(五)  同(五)の事実(日本テレホンの倒産)の事実は否認する。

2  抗弁2の事実(停止条件)は否認する。

被控訴人・日本テレホン間の本件電話装置の売買契約と被控訴人・太陽神戸銀行間の消費貸借契約は別個のものである。

(信義則違反についての控訴人の主張)

(一) 控訴人は、本件電話装置を抗弁1の(一)記載の売買契約に先立ち日本テレホンに売却ずみである。

(二) 被控訴人の借入金はいつたん控訴人の口座に振込まれているが、その後直ちに現実の売主である日本テレホンに回付されており、控訴人のもとには残存していない。

(三) 控訴人は、日本テレホンの依頼により同社から控訴人製造にかかる商品を購入する者の代金支払を容易ならしめるため太陽神戸銀行からの借入れに保証を与えていたものであつて、日本テレホンと被控訴人との取引の状況や被控訴人の債務の返済の状況等については知る由もない。

(四) 被控訴人は、本来自己が太陽神戸銀行に対して解約手続をとるべきであるのにこれを怠り、よつて控訴人に多大の出捐を余儀なくさせたものであつて、被控訴人の信義則違反の主張は理由がない。

(右主張に対する被控訴人の認否)

(一)ないし(三)の事実は知らない。(四)の事実は否認する。

第三 証拠〈省略〉

理由

一〈証拠〉を総合すれば以下の事実が認められる。

1  被控訴人は、神戸市北区において昭和五五年四月からドライブインを経営している者であるが、昭和五五年二月ころ日本テレホンの従業員青野満の来訪を受け、ドライブインに設置する電話装置を購入するよう勧誘を受けた。被控訴人はこれに応じて本件電話装置を購入、設置することとし、右青野との間で、テレホンサービス契約書(甲第一号証)、借入申込書(甲第二号証)、ナカヨビジネスローン借入保証依頼約定書(甲第三号証)、金銭消費貸借契約書(甲第四号証)の各契約書類を作成し、これを青野に交付した。その際被控訴人は、本件電話装置を日本テレホンから購入するものと認識していた。

2  右のうちテレホンサービス契約書(甲第一号証)には、工事請負契約書、保守契約書との副題が付され、日本テレホンが被控訴人から本件電話装置の設置工事を請負うこと、被控訴人はこれに対し代金として六六〇〇円を七二回にわたり支払うこと、本件電話装置の所有権は代金支払完了と同時に日本テレホンから被控訴人に移転すること、以上の条項が存し、被控訴人及び日本テレホン代表取締役の署名押印がなされている。そして右契約書における代金のなかには、本件電話装置の代金三一万円のローン支払金員(元利均等分割金六四三五円の六〇回払)が含まれている。ところが一方、ナカヨビジネスローン借入保証依頼約定書(甲第三号証)には、被控訴人は本件電話装置の代金を控訴人に対して支払うこととしこれを銀行から直接控訴人あてに振込むこと、本件電話装置の所有権を代金完済まで控訴人が留保すること、被控訴人が控訴人に対する債務を支払わない場合は控訴人は売買契約を解除しまたは解除せずして本件電話装置を取戻すことができること、以上の条項が存し文書の冒頭に「ナカヨ電子サービス株式会社御中」と記載され被控訴人の署名押印がなされている。更に金銭消費貸借契約証書(甲第四号証)の提携会社名(代金振込先)欄、保証会社名欄、販売会社欄にはいずれも控訴人名が記載されているほか、請求原因第1項記載の約定がなされており、太陽神戸銀行にあてた被控訴人の署名押印がなされている。

これより先控訴人と太陽神戸銀行との間では、控訴人の製品を購入する需要家に対し右銀行がその購入資金を融資し、その債務につき控訴人が連帯保証する旨の保証契約が締結されていた。

以上の合意に基づき、昭和五五年二月二三日太陽神戸銀行から控訴人の預金口座に三一万円が振込まれたが、その後右金員は日本テレホンに交付された。

3  本件電話装置の納入時期は被控訴人と日本テレホンとの間で昭和五五年二月二五日と合意されていたが、日本テレホンが右期日が経過し被控訴人が経営するドライブインが開業となる同年四月になつてもこれを納入しないので、被控訴人としては他から電話装置を購入することとし、昭和五五年四月ころ前記青野に対し本件電話装置の購入契約の解除を申し入れたところ同人はこれを了承した。

4  太陽神戸銀行からの借入金に対しては、第一回(昭和五五年三月二五日)から第一二回(昭和五六年二月二七日)までの間の分割返済金が支払われているが、被控訴人は右支払をしていない。その後第一三回(昭和五六年三月二七日)以降の分割返済金の支払がなされなかつたので、被控訴人は期限の利益を失つたものとして、太陽神戸銀行から連帯保証人である控訴人に対し未払残金二六万四四五〇円の支払請求がなされ、これに対し控訴人は右同額の金員を昭和五六年五月二七日太陽神戸銀行に支払つた。

5  控訴人は、親会社である訴外株式会社ナカヨ通信機の製造にかかる通信機器の販売を業とする会社であつて、自ら直接顧客に通信機器を販売するほか、日本テレホンの如き特約店にこれを販売している。その際特約店からの買主がローンの利用を希望した場合は、買主から特約店を通じて本件の如く借入申込書(甲第二号証)及びナカヨビジネスローン借入保証依頼約定書(甲第三号証)を提出させて、控訴人と提携している太陽神戸銀行が控訴人の連帯保証のもとに融資をなすという方法がとられている。

6  日本テレホンは控訴人の特約店として控訴人の販売にかかる通信機器を仕入れたうえこれを一般消費者に販売し、昭和五二年ころからは右販売に際し控訴人のローンを利用するようになつたが、昭和五六年二月ころ倒産し現在は実体もなく関係者も行方不明となつている。日本テレホンは、控訴人の特約店のうちでも二番目か三番目に大きな特約店であつて、右倒産時には控訴人は日本テレホンに対し約三億円の債権を有していた。

以上の事実が認められ、これを左右するに足りる証拠はない。

二右の事実によれば、請求原因第1項記載の消費貸借契約が日本テレホン及び控訴人を使者として被控訴人と太陽神戸銀行との間で締結され、その合意に基づき右貸金三一万円が控訴人の預金口座に直接振込まれる方法により交付された事実、並びに請求原因第2項(控訴人の連帯保証)及び同第3項(保証債務の履行)の各事実を認定することができる。

三進んで被控訴人の抗弁1(信義則違反)について判断する。

1  まず本件電話装置の売主が控訴人と日本テレホンのいずれであるかとの点について検討する。前記認定の各事実すなわち、日本テレホンは、電話装置を控訴人から購入し、これを一般消費者に売却していたこと、日本テレホン・被控訴人間のテレホンサービス契約書(甲第一号証)には代金完済時に本件電話装置の所有権が日本テレホンから被控訴人に移転する旨の約定が存し、かつ右契約上の代金中には本件電話装置の売買代金相当額が含まれているものと認められること、右電話装置代金相当額の支払については控訴人の提携する太陽神戸銀行のローンが利用されたが、その際、右電話装置代金相当額は一旦太陽神戸銀行から控訴人の預金口座に振込まれたもののその後控訴人から日本テレホンに交付されていること、被控訴人は本件電話装置を日本テレホンから購入、設置するものと認識していたことに照らせば、本件電話装置の売主は日本テレホンであると認めるのが相当であり(被控訴人と日本テレホンとの間のテレホンサービス契約は、本件電話装置の売買契約とその設置等についての請負契約の混合契約と認められる。)、甲第三、第四号証中の前記記載及び本件電話装置の代金相当額の借入金が太陽神戸銀行から控訴人の預金口座に直接振込まれている事実はいずれも右認定を左右するに足りないものといわざるをえない。

そして、前記一の3の事実によれば被控訴人・日本テレホン間の本件電話装置の購入設置契約は、昭和五五年四月ころの被控訴人と日本テレホン間の合意により合意解除されたものと認められる。

2  以上検討したところによれば、以下のとおり判断される。

(一) 日本テレホンと被控訴人との間で締結された本件電話装置の売買を中心とする一連の契約は、割賦販売法にいうところのローン提携販売にあたるものと認められるが、これらはあくまで被控訴人が本件電話装置を購入すること及びその代金を支払う資金を得ることを目的として締結されたものであるのに、結局本件電話装置は期日を過ぎても日本テレホンから被控訴人に引渡されないまま合意解除されるに至つている。従つて、控訴人の被控訴人に対する本件求償金請求を認容するときは、被控訴人の立場からみると、あたかも目的物の引渡を受けないままその代金の支払を強制されるに等しい結果を生ずることとなる。

(二) 本件電話装置の購入設置契約と被控訴人・太陽神戸銀行間の金銭消費貸借契約及び控訴人の連帯保証契約とは、法形式上は別個のものであるが、その経済的実質をみると後者は前者の代金支払のためになされているものであつて、両者の間には密接な関係が存するものといわなければならず、更に控訴人と日本テレホンとの間には、単なる卸売店と販売店というにとどまらず、被控訴人の控訴人に対する保証委託を日本テレホンが使者として媒介し、一方控訴人がこれに応じてローンの保証をなすことにより販売店による販売を容易ならしめもつて控訴人取扱にかかる通信機器の販売拡大を図り利益を得ているという共働関係が存在するものである。

(三) 本件は、控訴人が前記のような共働関係にある特約店の日本テレホンに控訴人と太陽神戸銀行との提携ローンを利用させもつて前同様の方法により日本テレホンから本件電話装置が被控訴人に売渡されたものであるが、右ローン利用により太陽神戸銀行から直接控訴人あてに振込まれた本件電話装置代金相当額の金員はその後日本テレホンに交付されているところ、同社は右受領後倒産し関係者も行方不明となつているため控訴人が日本テレホンから右金員の返還を受けることは事実上不可能となつたが、本件電話装置が被控訴人に引渡されることなく契約解除となつているのであるから、右交付金員は実質的には日本テレホンないし控訴人に帰属したといえなくもないこと、日本テレホンは控訴人の特約店のうちでも二番目か三番目に大きなところで、日本テレホン倒産時に控訴人は日本テレホンに対し約三億円の債権を有していた程の取引関係にあつたこと、及び原審証人久保島克之の証言により認められる日本テレホンに前記ローンを利用させた際すでに控訴人の担当者は日本テレホンが銀行に対する信用力を有していなかつた事実を了知していたとの事実に照らせば、日本テレホンの倒産による損失は、本件電話装置の一購入者というにすぎない被控訴人に負担させるよりも、平生日本テレホンと多額の取引関係を有し日本テレホンの信用状態について調査する機会と能力を有していた控訴人に負担させるのが当事者間の衡平にかなうものというべきである。

結局右の諸事情のもとでは、控訴人の本件求償金請求は信義則に反して許されないものというのが相当である。

よつて被控訴人の抗弁1は理由があるから、控訴人の本訴請求はその余の点について判断するまでもなく理由がないことに帰する。

四以上の次第で、控訴人の本訴請求を棄却した原判決は相当であつて、控訴人の本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条、第九五条を適用して主文のとおり判決する。

(村重慶一 宗宮英俊 藤下健)

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